ふと手に取りたくなる教科書はいかにして生まれたか?
お客様と二人三脚でつくった、オーダーメイドバインダー

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お客様と二人三脚でつくった、オーダーメイドバインダー

心身の不調の緩和や健康維持を目指す、フィトテラピーと呼ばれる植物療法を教えるスクールの“ルボア”。この学校で使われているテキスト用バインダーは、上品なデザインと質感から受講生の満足度を支える重要な要素となっています。今回、バインダーの製作を依頼してくださったルボア フィトテラピースクールのカリキュラムディレクターの神津まり江さんと、当社・吉田有里との対談が実現しました。


つくりたかったのは、手にした人の“人生に寄り添う”バインダー

――まず、このバインダーをオーダーするに至るまでの経緯を教えていただけますか。
神津まり江(以下、神津):私たちの関係の始まりは、有里さんがルボアのフィトテラピースクールに生徒として通われていたときに遡ります。

吉田有里(以下、吉田):その時スクールで使用していたファイルが、たまたまセキセイ興産が手がけた市販のクリアファイルだったことが縁で、思わず「これ、うちの会社のものです!」と伝えたことがきっかけでした。

神津:そして卒業後に、テキスト用のオーダーメイドバインダーは作れますか?と声をかけさせていただいたのが始まりです。私はこのバインダーを、単に授業のテキストを収めるだけのものにしたくはありませんでした。私たちが教えている植物療法は知識を得るだけの学びではなく、植物を通じて自分の身体と向き合い、知恵として毎日毎日使っていく学び。だからこそ、日々の暮らしに寄り添う“人生のパートナーのように、常にそばに置いておきたいバインダー”“ふと手に取りたくなってしまうバインダー”をつくりたいと考えていました。

こだわったのはスクールの世界観を体現した“心地よい上質感”

――そういったスクールの哲学をどのようにバインダーのデザインに落とし込んでいったのでしょうか?
神津:私たちのスクールでは優しさやナチュラルさに加え“心地のよさ”や“温かさ”を非常にたいせつにしています。植物やハーブを使って自分の身体を感じ、自身の心と体をより豊かなものにしていくことがとても重要。単純に気分をよくするというのではなく、五感で体にとって必要なものを感じ取り、よいものを取り入れていくという感覚的な部分が柱にあるんです。

吉田:そこで私は、その世界観を素材でどう表現するかに注力しました。イメージとしては京風のお出汁。一口目はむしろちょっと薄い感じがするけれども、二口目以降はいつまでも飽きの来ない美味しさ。ずっとそばに置いておくテキストだからこそ、さりげないけれども心地よい製品を目指しました。

神津:まさにその通りで、調和を感じるものをとお願いしました。

吉田:素材はプラスチック製のものではなく、布製のものを採用。プラスチック製だとどうしても“お勉強をしている”という感覚になってしまうと思うんですが、布製にすることで“私は今、自分をたいせつにするためのことを学んでいるんだ”という気持ちが高まると考えたんです。

神津:機能性を重視するのならばプラスチック製も理にかなっていますが、贅沢な布製にすることで受講生が丁寧にテキストを使ってくれるのではないかと思ったんです。

吉田:色は、ラベンダーやウィローグリーンなど淡い4色を採用しました。1冊でもきれいですが4冊並べた時もきれいですよ。

神津:色選びの時の有里さんの提案は、とても心遣いにあふれていました。生地を選ぶ際、見本帖に貼られた小さな生地でどれにするか判断をすることになるのですが、広範囲に生地が貼られるバインダーの表紙の場合、面積の広さや光の加減で色の印象が大きく変わります。植物を感じさせる優しい雰囲気は、微妙な色のニュアンスで大きく左右されてしまうことを理解されていた有里さんは、大きな元の生地を用意してくださりとても助かりました。

難易度の高い要望でもなんとか応える技術力と丁寧な仕上げ

――特に細部の仕上がりに関して、神津さんから細かなフィードバックがあったそうですね。
神津:表紙はセリフ体(明朝体のように細い書体)を銀で箔押しするデザインになっています。その際の文字の潰れの回避だけはどうしても譲れない部分でした。

吉田:実はこの箔押しが一番大変だったかもしれません。布に文字を箔押しするには、文字の細さに限界があるんです。細くて品のある文字の実現と箔押しの技術の最適なバランスを見極めることに苦労をしました。また製造の過程で現場から、薄い色の生地と艶消しの銀の箔押しは合わないという声が上がりました。バインダーはコントラストの高いデザインのものをよしとすることが多く、これまでの知見から来る意見ではあったのですが、私は「お客様が薄い色の布を使った上品な箔押しを望まれているので、なんとかこの方向性でお願いします」と訴えました。そしてバインダーは完成。できあがりを手にした現場からは「意外だった、とてもよいものができた」との声が上がりました。ルボアさんのおかげで、今までの常識にとらわれないこともたいせつであるという気づきを得られたことは感謝しています。

神津:そうおっしゃっていただけると嬉しいです。他にも仕上がりで驚いたのは、背表紙に表出する鋲の部分(リベット)を生地色に合わせて塗装していただけた点。すごく素敵な仕上がりになりました。

吉田:私たちにとっては美しい製品を使っていただきたいから、当たり前のこととしてリベット部分に塗装をしているのですが、もしかしたら他社ではオプションなのかもしれませんね。私たちが気づいていない自社の強みは、こういったところにあるのかもしれません。

神津:そう、とても感心したことを覚えています。あとリング部分についてもこだわりましたね。ルボアのテキストは頻繁に差し替えをするものもあれば、一度セットしたらあまり差し替えをしないものもあります。そのあたりを考慮して用途に合わせた提案をしてもらいました。

吉田:あまり差し替えをしないバインダーにはダブルロック式の金属製のリングを採用しました。金属ですので耐久性があり高級な仕上がりになります。一方、差し替えの多いバインダーは金属製よりも開閉しやすいプラスチック製のものに。力のない方でも開け閉めしやすく軽いという実用性を考慮しました。

心地よい信頼関係、一緒にものづくりをする楽しさを知りました

――神津さんは取引先の企業にどんなことを求めますか?

神津:メーカーの方にはプロとしての意見や提案を遠慮なく伝えてほしいと思っています。セキセイ興産さんは私たちの要望を組み取りつつ、プロの視点から「それでしたら、こういうことができますよ」「この生地ならこういった色もありますよ」といろいろ教えてくれました。加えて有里さんは現場の話などもたくさんしてくれたので一緒にものづくりをしているという感覚を強く持てて、とても楽しかったことを覚えています。

吉田:本当に楽しかったですよね。常日ごろ心がけているのは、そういったひとつ先の提案やサポートです。例えば、当社では事前にご支給いただいたテキストをバインダーにセットアップしてから梱包・納品するサービスも用意しています。お客様側でOPP袋を開けてテキストを装着し、また袋に入れ直す作業はとても面倒ですからね。負担を軽減するサポートをできるだけ安価に提供できるよう努力しています。

神津:細かいところまで配慮していただけるのは、本当に助かります。納品時の梱包の丁寧さや、こちらの手間を解消するためプラスアルファの提案など、信頼感は大きいです。

吉田:確かに納品物の特性によっては梱包する段ボールの厚さや緩衝材を変えたりしていますね。私たちは日ごろから“日本品質”を追求しています。例を挙げると、布や紙製の表紙の場合、季節によって含まれる水分の度合いが違うため表紙の反りが発生します。それを目立たなくするため、反ったとしても外側でなく内側に反るように加工するなど、常に工夫は怠りません。「お客様が使う時にきれいでないと意味がない」という基本中の基本を徹底しています。

――このルボアのバインダーは、市場でも大きな反響を呼んでいるそうですね。
吉田:はい。実はこのバインダーを自社のホームページに事例として載せてからは「ルボアさんのバインダーと同じように作ってほしい」という問い合わせが圧倒的に増えました。バインダーは当社の得意ジャンルなので、現場も非常に喜んでいます。

ずっと愛着を感じられるこのバインダーは、ルボアにとっての代表作になりました

――最後に、このバインダーを製作してよかったと思える点を聞かせてください。
神津:有里さんと一緒に作ったこれらのバインダーは、私やルボアにとっての代表作だと自信を持って言えます。ふと手に取りたくなる、ふと見返したくなる、ずっと愛着を感じることのできる教科書になりました。知識は詰め込むのではなく、生活の中で使ってこそ意味があります。だからこそ愛着を持ってずっと使い続けてもらえるものが完成してとてもよかったです。

吉田:入学希望者に向けてコースを説明するときに、アピールポイントのひとつとしてこのバインダーを紹介していると伺った時は、とても嬉しかったです。おかげさまで、このラベンダー色のバインダーは1000冊以上発注いただいています。長年培ってきた経験と、こだわりの素材、そして柔軟なサポート力で、これからもお客様の“欲しい”をかたちにするものづくりを続けていきたいと思います。

ルボアフィトテラピースクールのご紹介

ルボアフィトテラピースクールは、『フィトテラピー(植物療法学)』を通じて、植物のこと・からだのこと・自分のことを深く学びたい方のためのスクールです。
自然のちからをいただき、毎日の元気ときれいの味方にしたい方、大切な人や社会のために役立てたいと願うすべての人へ、体系的に学べるカリキュラムをご用意しています。
直営サロン「ルボア エクラ」では、フィトテラピーを身近に感じられる商品や、ハーブブレンドのコンサルテーション、ハーブ蒸しなどをご提供しています。

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