品質で応えるオーダーメイド。
セキセイ興産ものづくりの裏側
思い出をつづる『アルバム』ができるまで

トップコラムインタビュー品質で応えるオーダーメイド。
セキセイ興産ものづくりの裏側
思い出をつづる『アルバム』ができるまで

思い出の写真を保存するのはもちろん、大切なカードや好きなキャラクターの切り抜きなどを自由に並べると、特別な一冊になる。そんなふうに誰かの大切なものを保存するための製品が『アルバム』です。セキセイ興産では、その品質を保ち続けるため、熟練の技術を持ったスタッフが集まっています。

フォトアルバムをメインに、バインダーやファイルなどを製造しているセキセイ興産の立川工場に記者が訪れると、それぞれがアルバム製作に向き合い、働く人同士の深い絆から良い商品が生まれる、そんなようすが垣間見られました。

さまざまなデザインを実現する、
長年蓄積したアルバム台紙のための技術

セキセイ興産立川工場では、アルバム台紙のなかでも粘着力のある素材に自由に写真を貼ったりはがしたりできる「フリー台紙」を製造しています。
そして、40年もの間、大切に繋がれてきた機械は、アルバム台紙製造のために開発されたここにしかないもの。台紙にさまざまな色、柄を印刷でき、その厚みやサイズ、台紙の粘着度をどれくらいにするか…など、用途や好みに合わせた細やかな対応ができるのはこの機械だからこそ。
丁寧に仕上がりを見極めるのは、工場に長年勤めているスタッフ。数ミリのズレやヨレを瞬時に見分け、1枚ずつ選別していきます。

ここまで品質にこだわるのは、創業者の西川誠一郎氏の意思が根底にあります。1932年の創業当時は、現在ほど機能的に書類を仕分けるファイルが日本になかった時代。西川氏には、便利な文具で商売を円滑にし、戦後の日本経済を盛り上げたい、それも他社製品の仕入れに全て頼るのではなく、「製作工程からこだわりをもってお客様に良い商品を届けたい」という想いがありました。その精神が今も、息づいているのです。

美しい手さばきで生み出される
アルバム表紙

デザインの印象を大きく変える表紙は、手作業でカバーに芯となる厚紙を貼り、周囲を折り込んでいきます。
作業の大部分を担うスタッフ全員が、もはや職人並みの技術を持っています。ベルトコンベアの前に並び、数名で作業にあたり、流れるような美しい手さばきには思わず見惚れてしまうほど。
そして誰もがいきいきと仕事に向きあっているのも印象的です。聞くと『どの作業も一つ欠けてしまうと、完成しない。全員で一つの製品をつくるのが、本当に楽しいんです』と笑顔で話してくれました。

アルバム表紙が高級感のあるデザインとなる箔押しですが、これもまた確かな技術が必要です。あらゆるデザインに対応する箔押しの機械を使用し、紙の厚さや表面の素材により微妙に圧力をかえて押します。金や銀などの箔を用い、1点ずつ位置や力加減を見極めながら、それでいて無駄のない所作で、美しい表紙が次々にしあがっていきます。

想いと技術がひとつになり
高品質の製品に

機械の力を借りながら、多くの人の手がかかって出来たフォトアルバム。仕上がった製品は、角がきれいに出ているか、ずれやヨレがないかを確認します。セキセイ興産での基準をクリアした品質の良いものだけが出荷されます。

この工場で製造されるアルバムは、1日約3,000冊。雑貨店などで販売される商品はもちろんのこと、フォトグラファーや写真館など、写真のプロが使用する専用台紙も製造されます。幅広いニーズに対応し、そのどれもが手を抜くことなく丁寧に作られるのです。

「次世代にもアルバムで写真を眺める楽しさを伝えたい」
フォトアルバムにかける想い

最後に、工場の技術を長年にわたって支える1人、仙北谷 健さんに話を聞きました。フォトアルバム製造にかける想いは人一倍で、働きやすい環境づくりに取り組んでいる一方で、新たな商品の開発にも目を向けています。

仙北谷(せんぼくや) 健さん

――普段どんなお仕事をされているのでしょうか?

仙北谷:何よりスタッフのみなさんが気持ちよく働けるよう、資材を用意したり、声をかけたりする立場です。資材は表紙の中芯になるボール紙をサイズに合わせてカットするなど、”加工前の加工”を行っています。

――この仕事を選んだ理由を教えてください。

仙北谷:20数年前、結婚を機に前の会社を辞めたのですが、その頃、妻が妊婦で初めて子どもが生まれるので、写真をたくさん撮っていたんです。その写真をアルバムに収めるようになって…どちらかと言えば目立つのが苦手で、写真とはあまり縁のない人生だったのが、写真を撮る機会が増え、アルバムがとても身近なものになったときにこの仕事に出会いました。ふしぎですよね。先代の会長とも、とても気が合って、あれよあれよ、という間に入社が決まりました。

――仕事をする上でやりがいを感じるのはどういう時ですか?

仙北谷:機械は使いますが、ほぼ手作り。機械でバーっと大量に作るよりは自分たちでいろいろ考えながら仕事ができるのは楽しいですね。また、機械をセッティングしたとしても、思いどおりに動かず、慣れるには時間がかかります。その分、この機械にしかできないことがあり、そこがセキセイ興産だけの技術になるので、それをいかした製品を増やしていきたいですね。

――仕事で気をつけていることはありますか?

仙北谷:紙は湿度にかなり影響されてしまうので、紙を扱っていることが嫌になるくらいに、気をつけています。部屋の湿度が高くなってしまうと紙がすぐに波打ってしまいますし、冬場の乾燥も大敵。紙が悪くなってしまうと、そのあといくら加工をきれいにしても、良い製品にはなりません。これは、何年経ってもまだまだ経験が追いつかないなと思っています。

――今後の目標を教えてください。

仙北谷:アルバムは、写真を貼るという用途が主ですが、最近ではカードを入れたり、この先は、素材が変わるなどまた新たな道が拓けるといいなという想いがあります。最近は小さなサイズのアルバムが人気で、友人との思い出の写真を詰め込んで、ギフトにしている方が多いのかなと思います。そういった方がもっと増えるように、お客様の気持ちを想像しながら、「かわいい」「素敵」と思ってもらえるようなものを送り出していきたいですね。

Writing: Mihoko Matsui
Photo: Alex Abian, Kim Marcelo
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